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恋愛の解体と北区の滅亡/前田司郎


SNSのすごいところは、どんなに突飛な行動をしたつもりでいても、
絶対に自分ひとりで行動していたらば出会い、知ることなどなかったろう情報と巡り合えるところだと思っている。
この異星人襲来にも似た、意外性の不意打ち攻撃。痛快であり風穴だと断言したい。
ということで本書ももれなく、某書評SNSで紹介されていた一冊だった。

これ、どうやら某テレビ番組のオムニバスドラマ、その原作のひとつだったらしい。
また、有名な文学賞の候補作品でもあったという。
だが正直、物語はかなり奇天烈だ。
N.riverが『ペンギン村に日は落ちて/高橋源一郎』を読んだとき受けた衝撃に、近いものがあった。

ペンギン村、読んだ人いる?

中編と短編の二作が収められているこの一冊。
まるまる主人公のモノローグ形式で物語は進んでゆく。
めくるめく、自意識過剰がくだらない考察と論説。
重ねるたびに少しづつズレてゆく現実と検証。
その隙間に潜むのは?

宇宙人の襲来とかウンコとか、壮大なんだかちっさい話なんだか、もうギャップがたまらない。
たまらないところへもってして、輪をかけるドライブ感にグルーヴ感たっぷりの文章が、そのギャップさえ埋めて全体をつなげなおすハイテクニック。
だというのに悪乗り感なく、チャーミングかつ清潔感溢れる筆運びが、もう憎い。

だが冷静に振り返れば、演出ではないリアルを書いたらば、こうなるのではないだろうか。
モノローグで追う主人公の一挙手一投足に、思えてならないのである。
対のように持ち出される明らかな虚構、宇宙人とウンコを前に、
これは小説におけるリアリティについての実験かしらん。
ぼんやり考える読後なのであった。