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小説の神様/相沢沙呼


どっちを軸に回そうか。
しばらく考えてみたけれど実験的に、先に書いていた書評SNS用のテイストの違う文章を二つ、
あげてみようとか思いたった。
いや、なにも面倒くさくなったからではなくて、どうせ誰も読んでいないにかまけて、ではないよ。
……たぶん。


叶いそうなものを人はそうも願わない。
どん底で、だめだと分かっているからこそ祈り、願う。
だからしてそれでも願い、希望を持ち続けることの矛盾がどれほど大きいかは想像するに容易く、
物語を紡ぐということは、どれだけその祈りと願いを信じ、真剣になり続けられるかだと思っている。

主人公は学生の身でプロ作家としてデビューしたものの、そこから先が続かない。
誹謗中傷の中、焦り、皮肉をぶつちまけ、苦悩し、絶望する。
抱けるだけ願ってやまない思いがあることに気づくまでの、これは少々イライラする成長物語だ。
しかし後半、覆いかぶさっていた天井が抜けてからの疾走感は、半端ない。
無心に創作へ取り組んでいる時の、一点だけを見つめるまさにあの願いと祈りが炸裂する。
もしかすると書くための才能があるとすれば、
いかに願い、信じ続けられるかなのかもしれないと思うほどに。

そうして書く者がやり遂げたとき願いは届き、救われて、
受け取った者が、ありはしない世界に寄り添うことで勇気づけられるのだとすれば、
そんな互いの間に働く癒しの力こそ、まさに小説の神の成せる業なのだ、と思うのである。

そんな奇跡を見せてくれる、一冊。



ラノベ初読了。
同じ構図と表現が繰り返されるがクドくとも言いたいことはよく伝わる。
文芸版巨人の星。小説養成ギブス。思い浮かべた執筆周辺の苦悩と葛藤がアツい一冊。

読者もバカではない。読者に失礼な物は弾かれる。それは書き手も信じていない物語であり、切望される希望を書きたいならいかなる渦中で叩きのめされようともその希望を自分こそ信じ抜けだ。
物語る者、全てに送るエールがここにはある。
趣味で書く自身としても共感で来たり勇気をもらったり。
ちょっとクドいけど。それ程作者は訴えたかったのだと、身に覚えがあるから目をつぶる。


さて、どちらがよろしいかな。