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変愛小説集/岸本佐知子 訳


このところ並ぶ海外文学のタイトルは、
本好きさんの集まるチャットやSNSで得た情報を元にチョイスしたものばかりである。

そもそも訳文という点において、懐疑的となっているN.riverは海外文学を日本語で読むことを
あまり快く思っていない。
し、以前、ヒドイ訳文に当たってしまってそれからイヤイヤ病が発症してしまった次第だ。

しかしながら今回も、全幅の信頼をおく読み手さんからイチオシされ、よしと腰をあげたのがコレである。

「小説集」というだけに、短中編からなるオムニバス作品の本作。
好きだの嫌いだの、出会いだの別れだの、正直言ってそんな安直な展開はひとつもない。
いやそもそもベタな恋愛小説がダメなだけに、そんな作品の連続なら読むことができなかったろう。
綴られているのはめくるめくファンタジーであり、おぞましくも美しいメタファの世界だ。
その万華鏡のような作品群には、本当に想像力と創作意欲を刺激される。
海外作家という点も、発想においてだいぶと貢献しているのだろう。

だがひとつ貫かれているものはある。
それが執着なら、愛も執着の一つであるといえよう。
本質がカタチを問うことはない。
表現はその実践だ。

果たしてどの短編に心惹かれるのか。
これもまた読み手の執着を暴く鍵となるようで、
オモシロイだけに終わらない鋭さ兼ね備えた秀作群であったなぁ、とホメちぎるのである。