イベント報告2『尼崎文学だらけ』当日



そこに魔境はあるという。

装備整え、踏み込んでまいりました「尼崎文学だらけ」会場当日。
今回は、NRの過ごした流れと会場の様子をご紹介。

さて、前日設営をいたしましたNRは、朝、小銭と「文学フリマ大阪」用に残していた頒布本だけを引っ提げ「尼崎中小企業センター」へ。
もうすでにチビりそうで、建物へ入るや否やの90度ターン。向かった手洗いで人とすれ違うたび、「よもやおぬし、出店者では……」と警戒の眼差しを向ける奇行。
経て、開かれた魔境「尼崎文学だらけ」へ足を踏み入れたとたん、心の中で上がった声は「わぁ~」でした。
すごい。
50ブースだけ、といえば「だけ」ですが、囲い、せっせと自らの世界を立ち上げて行く出店者の皆様の姿はさながらアルケミスト。無から有を作り出す魔法使いの、しかも生き生きと弾むような魔法使いの姿です。
その熱量にともかく圧倒されました。
だからして保つポーカーフェイスこそチキンの証。
むわん、むわん、と吹きつける熱風をかいくぐり「本部! 本部! 応援を要請する! こちらなでゆーし部隊、応援を要請する。繰り返す!」唱えながら己が砦へと匍匐《ほふく》前進です。

右となりはサークル名「ぽよよんドリーム」さん。
左となりは絵画でもご活躍中の「鈴木マヤ子」さん。
ご挨拶したり、おやつ貰っちゃったり、名刺交換したり。出展者気分を満喫します。しかも我ら三人、イベント初参加、もしくは日が浅いと分かり、鈴木さんに至ってはロシア語勉強仲間とも分かり、色々お喋りさせていただきました。
お隣さんは大事ですね。恵まれた今回、それだけでも本当に楽しく、情報交換等々、刺激を受けたりと有意義な時間を過ごすことができました。

閑話休題。
そんなこんなで迎えた会場時間の11時。
主催者様のひと声と共に拍手は湧き起り、魔境の門が開かれ一般来場者さん入場開始です。
つまり外で待っておられる方がいることに正直、驚きました。けれど投げ売り特売日のスーパーがごとく、駆け込んでくるような乱痴気騒ぎにはなっていません。ゆったり大人の余裕をかましながらの御入場です。
そんなお客さんの視線が己がブースへ流れるたび尻の穴をすぼめ、肩をそわそわさせるこの気持ち、一生、忘れないでしょう。
むしろ忘れたいけど、ああ、あなた、今、私の本をチラ見しましたねっ? 色が気になりましたか? 文言が気に入りませんでしたか? 笑った? うなだれた? もう一挙一動に操り人形と化するばかりです。

人出のピークは12時前~14時半あたりだったと記憶しています。
年齢は二十代後半からご年配の方まで多様。(むしろ中高学生さんは見受けられなかった気がします)性別も男女比半々。お子様をだっこして、車いすで、リュックで、手提げで、手ぶらで。本当に色々な方がお見えになられました。かなり遠くから来られた方もおられる様子。あちこちで作家さんとの会話も飛び交い、何度も何度も会場をグルグル回って真剣に吟味される方も。入口から中をのぞき込み、やがて入ってくるお客さんの挙動を観察するのが、これまた楽しかったです。
つまり「あまぶん」には、それだけ多様なお客さんを満足させるだけのキャパがあるんだなぁと。売れ線なんてとんでもない。創作の自由が担保されているんだなぁ、とも感じ取った次第です。

おとなりのぽよよんさんは、積極的に通り過ぎるお客さんへ無配を配り、もう片方のおとなりの鈴木さんは実演販売、和綴じの本をせっせと製作。人目を惹きます。
イチャモン付けに来たり、ちょっと粘着体質、などと困ったお客さんは一人もおられませんでした。ああ、みんな本が、物語が好きで、敬意を払っておられるのだ。ひしひし実感します。

13時頃、ランチタイムか、やや人足が引いたところでNRも座布団と化していた尻をたたんで会場を回ります。
いやはや魔境です。
長机のブースのみならず、何もない180×180センチの「だらけブース」がある「あまぶん」では、プラレールの上を電車がグルグル走っていて二度見。
ほ、骨? 敷き詰められた文字の上に骨がレイアウトされていたり、テ、テントぉっ? 張られていたり、ポスターが何枚も並んで、ゲーム盤が設置されて……、それでも本が売られているという光景に絶句。
目がくらみました。
足が止まりました。
ヘルメットを押さえながら「メーディーック!」被弾を伝えて救護を呼びました。
こんな文学フリマ、あるんですか。
大人の文化祭大爆発です。
ですえずフリーダムです。
学生の頃、やり残したことがある方は是非、頒布本を作成の上、もれなく参加をお勧めしたいことしきりです。

あやうく失血死しかけながらも、前もって取り置きをお願いしていたブースへ参上。欲しかった本を入手。
予約しておけば名前を告げるだけで出店者さんも即対応して下さり、お互い初対面時のストレス減につながったなかぁ、と振り返ります。
それにしても本の印象やネット上での印象と、作家ご本人様の印象もまたガッテンだったり違っていたり、自分の中で処理するのが案外、大変でした。(それはお互い様かも)
さらに前日の試し読みで気になった本を、現場で購入を決めようと思っていた本も手に入れ、いったん撤収。
お昼をセンター内のレストランでいただきました。
安い! ウマイ! 早い! さすが近隣のサラリーマンを支えているだろう立地ゆえ、確かな味です。

ということで午後の店番に戻ります。
和やかですが皆、真剣です。
落ち着いた時間が流れます。
会話も途絶えません。
このころNRのブースには主催者様が来られております。
「あまぶん通販」を通して頒布本の注文を頂いていたため、その場で現金と頒布本を交換。本日の最重要ミッションを完了させました。

ところで「あまぶん」のほかにないところは、ゆきとどいた作家さんサポート体制だと感じています。宣伝、通販、搬入・搬出、告知。こまめに行われている印象があります。事務局と作家個人がつながっている安心感があります。なにせ初出店のNRが一度もつまづくことなく、確信をもって出店出来た、それだけでもお墨付きだと思うわけです。

などと浸れども永遠などなく、始まりを持つモノ全てに終りがあるように、やがて宴も斜陽となり終わりを迎えます。
魔境も呪縛を解かれ魔境でなくなり、覚えた軽い疲れと共に現実へほどけてゆきます。

4時終了の「あまぶん」、さすがに3時半を回ると一般のお客さんも少なくなり、早いところではブース撤収される出店者さんもチラホラでした。やがて4時と共に閉場が告げられ、出店者さんの間からため息ともつかぬ声が漏れ、一斉に後片付け開始です。NRも流れに乗ると、昨日、作りつけた全てをボストンバックへ格納。
会場ではこの後も朗読会や公式打ち上げがあり、半数以上の方が残られる様子ですが、NRは月曜を考慮し両のお隣さんへ、主催者さんへご挨拶し、会場を後にしました。

その心で唱えるのは、ありがとう「あまぶん」! 最高だったよ、魔境! そしてなにより、そこに集った主催者の方、出店者の方、お客様、みんながステキだった! それだけでもうそら贅沢な心持ち、ほんとうによいイベントでした。

さて次回更新は、9月連休の「第5回文学フリマ大阪」の報告で。