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ボクの女に手を出すな/桑原穣太郎


さて、ここまでくれば、N.riverの傾向と対策は、
もうお分かりのはず。
そう、N.riverは基本、劇画とアウトローが好きな
勘違いがイタいタイプである。

幼き頃は、緑ジャケットのルパン三世がヒーロー。
そして書き物で遭遇したアウトローの最初はまさに、
本書であった。
だがしかしもう20年は前のこと。
だからして印象は十代のものだが、
まあ、恥こそ「飲む読む」のウリなので、
当時より強烈に残る印象をメモしておこうと
開き直って、今日も一筆、踏ん張るのである。

主人公は十代の少女、それも不良少女だ。
まず、そんな彼女の、まっすぐなものの見方が気持ちいい。
悪い、おかしい、ズルイ、が見分けられる彼女は、
それらをきっちり表現することもできる、強気な人物である。
だから彼女が吐き切れば、
読み手の胸に、彼女の気持ちはストンと落ちる。
そうして得た共感に、読み手の闘志へも火は点くのである。
この純粋さがまず、本書の魅力だろう。

そしてそんな彼女をピンチに立たせる
曲がったことを企む大人が数多、でてくるわけで、
彼女は精一杯の知恵を働かせ、そんな大人と渡り合う。
ここもひとつ、はらはらドキドキの見せ場であり、
弱いハズの者が強い者に勝つ、オハナシならではの醍醐味を味わえる箇所だ。

もちろん不良少女だって一種のアウトローなのだが、
加えてアウトローの真骨頂が出てくる。
そんな彼女を後半、チョイッと出てきて手助けする男だ。
彼が憎いほどいい味を効かせて止まないのである。
たしか男の名前は横文字と漢字が混ざった、
冗談のようにキザな名前だったはず。
(マック竹田、とかその辺り)
もちろんそれは偽名で、男はその実、
自らそう名乗ってなり切ったりする、お茶目な殺し屋なのである。

このどこまでが冗談で、どこからが本気か分からない、というノリがいい。
しかしながら決めるところは決めるのだから、まったくもってかっこいい。
かっこよさには苦虫噛み潰した、というのが定番だが、
このひょうひょうとした、というのも捨てがたい。
N.riverはただただ目移りする。
それがどれほど無意味だろうと、だ。

だからといって、『ボクの女に手を出すな』と口にするのは、
ここまでとりあげて来た誰でもない。
キメゼリフと最も心地よく聞けるそれは、
作中、悪戦苦闘しながら不良少女が匿ってきた小学生だったか?
男の子が不良少女を守るべく、迫りくる大人を相手に吐くセリフなのである。

魅力的なアウトローが活躍する本書は、
物語のスピード感といい、キャラクターといい、
こうして記憶に残るほど鮮やかだ。
そして純粋と、曲がったことを嫌えばアウトローにならざるを得ない、
そんな書き手の世間に対するガッツが
青かろうと、赤かろうと、印象的な一冊なのである。


★ハードボイルドほども堅苦しくなく
 今でいうライトノベルほどもくだけていない
 軽妙な語り口が読み手を問わない
 作品だったと思います
 アクションはあれどバイオレンスはなく
 恋心はあれど全年齢対象
 ジュブナイルのようで違うような
 痛快冒険小説です