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三国志/吉川英治


正直少々、飽きてきている。
何がってそりゃ、「飲む読む」の連載だ。
プログラムは予告なく変更する場合があります、
と断りを入れているのだから、残りをスパッと切って、
も、やめよかなぁ、
と思うが、裏切りそうそう、筆は進むのである。

あれは無理だった。
読破なんて無理だった。
高校生の時、男子の間でやたら流行っていた「三国志」。
古本屋で吉川英治の全巻を安く見つけたおり
読んでみるか、とN.riverも手をだしたが、
まったくもってダメだった本がこれである。

「だいたいだね、ちみ」
 言ってそのとき、NRはソファより身を乗り出した。まだ火の点けられていない煙草は指の間に挟まれたまま、振ってNRはこうも続ける。
「登場人物が多すぎるんだよ。多いんだよ、アレ、ね。しかも全員、漢字ばっかりの名前って、ややこしくてさぁ、覚えきれたもんじゃないじゃないよ。そうでしょ?」
 いや、漢字だというなら日本人もほぼそうだ。言いたくなるが始まったばかりで、咄嗟にぐっ、とのみこんでいた。知らずNRはひとり苛立ち、紛らせ懐からそれを抜き出す。見間違えようのない100円ライターは胴が緑と、NRには似合い過ぎていた。見とれかけてどうにか「そうでしたか」と、間抜けた間合いで答えて返す。ならNRは、くわえた煙草へしゅぼっ、と火を点け、美味そうに吸い込む一息で、あっという間に、先端、数ミリを灰に変えてみせていた。
 「ああ駄目だったね。話にならんよ」
 言う顔の穴という穴から煙は吹く。しかしながら、おかげでどうやら落ち着きは取り戻せたらしい。死んだ魚も死に足りぬ目が、ようやく正面へ固定されていた。
「で、どのあたりまでは読まれたのですか?」
 聞いておくことは礼儀だと思えてならない。NRは「えーとね」とまた煙草を吸い込み、考えてから何の悪びれもなくこう言った。
「桃の畑だっけ? 劉備に関羽と張飛が兄弟の盃を交わすところまでだよ」
 おい、そりゃないだろ。ついぞ言葉は脳裏を駆け抜ける。なぜならそれは出だしも出だし、何も始まっていないところだからだ。しかもそれまで出てくる人数など、たかが知れている。曹操さえまだじゃないのか? それでもうダメなのか? ダメなのは物語ではなく、アンタじゃないのか? 言葉は胸中を吹き荒れ、コイツに礼儀は必要なかった、むしろ聞くだけ無駄だった、思考は巡り、返事ではなく質問自体をなかったとにしようと心に決める。
 おかげで会話は止まっていた。だがそのぎこちなすらNRには、一切、関係ないらしい。
「最初っからさぁ、こう、ばーっと主役はそろってさぁ、がーっと、敵が攻めてきてさぁ、ドンパチやってさぁ、女だよ、女がでてこなきゃさぁ、目が覚めないんだよね。だのにあっちの国がどうだのこっちの国がああだの、貧乏たらしい民がなんちゃらってぇさぁ、前置きが長いんだよね。もう、つきあってれないんだよ。飽きちゃうんだよ」
 身振り手振りは阿波踊り、マイペースも極みと並べ立てる。
 「いやでも、それが背景というやつで、歴史ものですし、そこを踏まえるから絡みが面白……」
 言ったはしから「あのね」と煙の向こう、NRの目つきが変わるのを見せつけられた。
「そんなの展開と共に折り込まなきゃさ。きょうび、取扱説明書みたいなの、誰が読むかね」
 ひそめた眉こそ、真剣そのものだ。
 気迫に押され、つい引き下がってしまっていた。
「は、はぁ……」
 だがそこれこそが間違いだと気づかされたのは、直後のこととなる。
「そもそも読めなかったのはだね、チミ」
 使うならそっちじゃなくてこっちだろ。いいたくなるような神経、細やかな手つきでNRは、ずいぶん重たげと長くなった煙草の先の灰を落とし、言い負かせて浮かべた薄ら笑いの上に、灰さえうまく始末できた優越感をはりつける。堂々と言ってのけたのだった。
「読者への、サービス不足が原因なんだよ」
 ねぶるようにフィルターを、くわえなおす。勝ち誇った目じりが垂れ、黒ずんだ頬はその腹具合よりだらしなく垂れて下がった。見れば見るほど陳腐が過ぎる。哀れが服を着ているとしか思えず、諦めが全身を襲っていた。ここはひとつ相手してやるしかなさそうで、「はぁ」とまた、気抜けた声で答えてやる。
 気づかぬNRはその後も煙草3本分、絶好調と話し続けた。ある意味、その話を熱中して聞くことができたのは、興味に駆られたせいだといえよう。そして興味は、ひとつの結論へ辿り着く。
 眼前において心底、思っていた。
 コイツはアホだ、と。

残念なのか、ハマっていたらどエラいことになっていたろうから、よかったのか、
あのロマンは、どうにもN.riverには伝わってこなかった。
今後も読めそうな気がしない。

そして飽きた今回、趣向を変えてこんな具合につづってみたが、
果たしてコレ、どうなんだろう?

※三国志を読めなかった人に対して、 決して悪意はありません。あくまでも N.riverの例であり、誇張したドラマです。


★漫画、小説と幾人かの有名作家さんが 記しておられます
 自分の好みにあう一冊を選ぶことも 大切かも
 先に中国の簡単な歴史をさらっておくと
 細かい物語の展開にもついて行けるのかな
 と思いました
 策士、画策、という言葉に心動けば
 きっと大丈夫だと思いますw