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かたあしだちょうのエルフ/おのきがく


「泣きの絵本」その2こそ
この『かたあしだちょうのエルフ』である。
イラストではない版画の絵本だ。
色もカーキーでまとめ上げられ、なんとも渋い。
幼稚園か小学生低学年の頃、出会ったN.riverにとって、
絵本とは思えぬ暗さが印象的であった。

舞台はアフリカだ。
エルフは羽が立派で、足が自慢のダチョウである。
ある日、獣から子供らをまもるため肉食獣と闘い、
その片足を失った。
満足に動けなくなったエルフへ
助けられた子供らを中心に、みなは感謝の意を示し
食べ物を運んで礼を言った。
けれど感動は続かず、次第にエルフは忘れられてゆく。
カサカサに乾いて死にそうになるエルフ。
そこで手ごわい相手は、また現れた。
エルフは誇り高い勇者に違いない。
片足でも狙われた者を守って、羽の下に匿い、闘うのだ。
そうして守り切ったその後、
ありがとう、と羽の下からみんなは見上げる。
カサカサに乾いていたエルフはそのとき
一本の木に姿を変えていた。

弁慶か!
というツッコミはなしだ。
無論、弁慶の立往生を知らぬ小さい頃のN.riverは、
それよりなにより、かわいそうの度を越して怒った。
どうしてエルフを最後まで、いたわってやらなかったのか。
でもって、また助けてもらって、
エルフはついに死んじゃったではないか、と。

なぜか何度も読み返し、ここだ、ここがイカン、と
検証していたように思い出す。
そして自分ならこのオハナシは、
と妄想を広げもしたのだった。

この絵本が訴えることは、予定調和におさまらない。
勇者になる理由も、
弱者をいたわらねばならない根拠も、
美談ではないのだ。
だとして、どうくぐり抜ければいいのか。
もう、ハーバード大学のサンデル教授あたりに聞きたくなった
N.riverであった。


★あらすじ全てを書いてしまいましたが
 ニュアンスはずいぶ違うと思います
 書店で見かけたさいはぜひ
 一読をおすすめします
 しかしながら 後引く結末
 心身の調子の良い時に
 どうぞお試しください