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アメリカン・スナイパー/クリス・カイル他


クリント・イーストウッド作品が好きだ。
初作「許されざる者」を見たときは、北野武作品「その男、凶暴につき」くらいの衝撃があった。

ということで全部、とまではいかないまでも、見続けているイーストウッド作品。
この本を読んだきっかけは、まさにそんなこんなで同名の映画を見たから、ということになる。

メディアで客観的な情報しか見聞きしない我々にとって、
戦場へ赴いた一個人の、本人の口頭なり、手なりで書かれた書き物は少なく、貴重ではなかろうか。
だからして最も興味をひかれたのは、解説されることのないありのままの心理だった。

読む限り、淡々としている。
時折、挟まれる、落ちてくる情報だけでは知り得ない、実際における細かな事実の描写も臨場感や説得力がなかなかにうならされる個所でもある。
ただし、そうして淡々と積み重ねあげられてゆく中で、
ある瞬間からナニカが
ドコカが

「踏み越えて」しまう

のを感じ取らざるを得なかった。
まるで昨日の今日はつじつまが合うのに、今日の先週とではまったくかみ合わないように。

結末も衝撃的ながら
なにより恐ろしく不気味に感じたのは、その変化ととれない変化の
成し終えてから感じる大きさだろう。

「人は変わる」というけれど、こんな変わり方だけはしたくないなと思う。
容易く元へ戻れないからこそ。

戦争もさることながら、心理に興味のある方にもご一読をおすすめしたい。

(ぜんぜん話はかわるけれど「ハドソン川の奇跡」も、大変な良作でした!)