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シャーロックホームズの冒険/コナンドイル


さて、小難しい作品ばかりを並べてきたN.riverであるが、
そんなのばかり好き好んで読んでいるわけではない。
己が阿呆をうめあわさんがための、苦行である。
あと、かっこつけもね。

そんなN.riverが物心ついたころ、最初に寝食惜しんで読んだのは、
『バスカーヴィルの魔犬』だった。
そう、探偵シャーロックホームズが登場する長編である。
少しおどろおどろしくて、大人びた展開が釘付けだった。
くわえてそれまで、純正お子様向けのオハナシばかり読んでいたN.riverだ。
「~でした」と語られていた文章が、ここでは「~だった」と記されていたため、
すこぶる深刻な雰囲気が、なお気持ちをかきたてていたように思い出す。

が、なぜかしら興奮度合は思い出せるのに、詳細が思い出せない。
しかし、そのあと間違いなくホームズを気に入ったN.riverは、
現に『シャーロックホームズの冒険』を読み始めたのであった。

当時、新聞連載だったシャーロックホームズシリーズ。
舞台は霧の都、ロンドン。
まだ街にはガス灯が灯り、馬車が走り、紳士はハットをかぶり、淑女は麗しく、
ロイヤルな雰囲気が巷にもふんだんに残っていた時代。
それだけでも純日本人には幻想的であるところに加えて、ミステリーがさらなるスパイスを利かせる。
ベイカー街221B。
ホームズの元へ持ち込まれる怪事件、依頼そのものが、この小説の魅力だ。
そしてそんな依頼を前にしても色褪せることなく、
あっ、と驚かせる観察眼で論理的と推理してみせるホームズの鮮やかさも、
知性がセクシーと映ってたまらない。
読者はその一部始終を、ホームズと行動を共にするワトソンの視点で、垣間見る。
おかげでスリルとサスペンスの臨場感も半端がない。
『冒険』と銘打つにふさわしい構成である。

しかし子供ながらにがっかりだったのは、
ホームズがアヘン中毒者だったという設定だろう。
キライになりはしなかったが、
ホームズのおいちゃん、しっかりしてよ、と悲しく感じたことは否めない。
しかもこのシリーズの最後、ホームズは最大の敵、モリアーティ教授と滝つぼに落ちて行方不明になる。
清廉潔白、必ず最後にヒーローは勝つ。
信じていた子供の頃、そして裏切らなかったたいていのオハナシ、それらとは一線を画した驚愕の展開だった。

だが忘れがたい一冊となったそのわけは、
そうしてのぞき見ることとなった『大人の世界』
であったことは、言うまでもない。


★言わずと知れた屈指の名探偵ものは
 老若男女、誰が読もうと普遍の面白さがあると思います
 加えて、近代との狭間のような時代、風俗を踏まえていれば
 なお作品を満喫できると感じました