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インザ・ミソスープ/村上龍


新聞連載だったといえば、
あれだけ毎日、新聞を見ているのに、ついぞ読んだことがなく、
思い過ったときちょうど新連載として紹介されていたのが、
村上龍氏の『インザ・ミソスープ』だったのである。

 毎日、原稿用紙数枚分の量じゃあないか。
読めないはずがない。
思ったもののN.riverは自分が『イラチ(関西では気が短いの意味)』
であることを、忘れていた様子だ。
あのちまちました進展具合が性に合わず、結局、新刊になってから一気に読み始めたのだった。


おそらく扱われていたテーマは、時代を斬ったものであったはずだ。
はずだ、というのは
日本を訪れていた一人の外国人を主人公がガイドする中、
(連続?)猟奇殺人が起き、
どうやらガイド中の外国人が怪しくてならず、
もし彼がそうだったら自分の身は危険じゃないのか、うんぬん、
というあらすじさえ吹き飛ばすほど、
その外国人の不気味さと、東京の街の妖しくも怪しい様と、
最後、明らかとされる殺人の描写ばかりが強烈に残っているせいである。

村上氏の文章を読んだのはこの時が初めてで、それが全書にわたる印象なのかどうかは、このとき判断がつかないでいたが、
何ともウエットで、魑魅魍魎が見え隠れするような、精神的に蝕まれる感満点の作風が、それを醸し出す描写力が、ともかく強烈と刻み込まれたのである。
加えて著者自身が取材を通し作品を生み出すせいだろう。
アヤシイ雰囲気に浮つくことのない徹底されたリアリズムは、そこへ殺伐ささえ加わることで、
『無機質なグロテスク』と印象づけられている。
それがいかに狂気であるか、同時にどれほど病的であるか、は、
思えば本書のテーマを言い当てるに、大きな手掛かりだったのでは、と思い返す。
が、生理的に深入りしたくなく手放した。

しかしあれを夕刊で連載していたのか、と思うと、きわどいなぁと思うしかない。
放送事故寸前のラスト近辺は、フィジカル、メンタル共にお子様には不向きで、
氏のペン先に込められた気迫の凄まじさを、感じずにはおれなかったのだった。

おっかない人だなぁ。
N.riverは村上龍という人物を、そうとらえずにはおれなくなる。

 (今回、ここに書くにあたってググった感想のおおむねは「気持ち悪い」、であったことから、今現在、考え直してみれば、生理的に誰もが避ける部位へ目をつけ、あえて切り込んだ氏が、いかに繊細でタフだったかと思わずにおれない。させるほど氏が抱いた現状への危機感は、しかしいまだ生理的に拒否されて、メッセージを受け取れる人間を限定しているように思えてならない。だからこそ危ないんだ、気づけ、と言われているような気もするが、N.riverはまだぬるま湯につかっていたい大衆の一人なのだ)

そこへもってして、これは分かりやすい、
『半島を出よ』というエンターテイメント小説は発表される。
話題の? 北朝鮮兵が九州へ上陸、福岡ドームを拠点に日本へ宣戦布告をしかける、
という奇想天外な、新聞広告もドデカな話題の書だ。
何かしらの傾向と対策をつかむには、一方向からの見識で足るはずがないことは、いわずもがなである。
気づけば書店のレジ前で、いそいそと財布の口を開くN.riverなのであった。


★社会派ゆえにか セックスアンドバイオレンスが満載です
 グロが苦手な方には おすすめしません
 ですがグロにエンターテイメント性があるのかといえば
 ありません
 果たしてこれが何を言わんとしているのか
 そちらへ思考が働く方向けの
 ハードな一冊だと思います