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縫製人間ヌイグルマー/大槻ケンヂ


久しぶりに本を読もう。
そう思って立ち寄った書店。
その時、彼と目は合った。
名はブースケ。
そう、彼こそが『縫製人間ヌイグルマー』だったのである。
だからしてN.riverが、え、と躊躇したことは否めない。
これにするのか?
ああそうだ。
そのタイトル、思いっきり『人造人間キャシャーン』のパクリじゃないのか?
お前、キャシャーン、好きだったじゃないか。
うむ。
手は自ずから、伸びていた。


さあ、だからといって主人公のブースケの背中に、チャックはない。
ブースケは布製の目もボタンな、正真正銘のヌイグルミなのだ。
これが紳士で、めっぽう強い。
蝶のように舞い蜂のように刺す華麗なアクションで、
大事にしてくれた姫ちゃんを守るため、己の宿命のため、襲い来る敵と闘い抜く。
この敵も、赤ちゃんオヤジだったり、ロリータ娘だったり、同じヌイグルミだったり、
なんだか気の抜ける外見に、抜け目のない意思を宿した強敵ばかりとアツイのだ。

コミカルなんだか、ファンタジーなんだか、バイオレンスなんだか、
もう渾然一体となった戦いは、
ぬいぐるみであることを忘れちまうほどハードボイルドなうえ、
見せる背中は荒野のガンマンほどもシブい。
頼りたくなるたくましさが、哀愁が、満載である。
ブースケ頑張れ。ブースケかっこいい。ブースケ惚れるぜ。
……ブースケってぬいぐるみなのに、な。

果てに続編があるかのごとく、闇の中へ消えてゆくようなラスト。
大槻ケンヂ氏、それで終わりは殺生だ。
もっとブースケを!
一気に読み終え、ニマニマしながら吠えるN.riverなのであった。

可愛くてカッコイイ。
日本のサブカルチャーが詰め込まれた
ポップでキュートでハードなディテールが、たまらない本書。
物語にある、古き良きヒ-ロー物の王道が生み出す、
問答無用の疾走感も理屈抜きに楽しめる。

ちょっと気取って、賢ぶってきたN.riverのツケだ。
小難しいことは抜きで行くぜ。
ただひたすら、ブースケが態度で示す生きざまを見よ。
そして書いた大槻ケンヂ氏の、内側を見よ。
打ったホームランを見送るような、そんな爽快感ある一冊だった。


★ライトノベルに属すると思います
 思わずニンマリ笑ってしまう箇所満載です
 とうっ、と飛び上がる戦隊モノなど
 ヒーローが好きな方におすすめします
 以外と女の子向けなのではないか
 と感じながら読みました