親愛なるもの/いとうせいこう
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そういうわけでもうひとつ、実験的意図にあふれたいとうせいこう作品を紹介しようと企むN.riverなのである。 それが本書だ。 さて、全てを網羅したわけではないが、いとう氏の作品テーマにはこのように、 「言葉を使って何かを伝える」すなわち書き物のソフト面ではなく、 「何かを伝える言葉やその構造」とはどういうものか、と言うハード面への挑戦が度々、うかがわれるように思うのである。 これは書く人間にとって、大変刺激的だ。 そんなわけでここでは、我々がごく自然に受け入れている「何かを伝える言葉」の両端に立つ 「贈る者(著者)」と「受け取る者(読者)」の関係を暴き、 読んでいる己を意識せずにはおれなくなったところで、 超絶イリュージョンな仕掛けに出くわすのである あれ? ワタシハダレ、ココハドコ、と。 おそらく最も効果的に味わうことができるのは、 注文の際、登録した読者本人の名前等が作中に登場する パーソナライズ版、という限定発売されたバージョンだろう。 でないN.riverは誰という個人向けではないパブリック版? にて読了したが、それでも十分堪能できた。 おそらく基礎知識に、言語に対するラカンの考察を知っておいた方がよいような気もするが、 以外にも本書は「キムチパンク」と称された近未来ソウルや、 魅力あふれるキャラクターに緊迫感のあるSF展開が楽しめるのだから むずかしいことは抜きにして、エンタメとしても楽しめると、お勧めするのである。 |