東西南北殺人事件/赤川次郎
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さて、今さら解説するまでもなく、 元来、N.riverはものを知らないアホウである。 これが漢字もだいぶ、ウトい。 語彙に至っては、近年、減少の一途をたどり 財源を割いて真摯と対策を練らねばならぬほどなのである。 「欠伸」 本書には、いたるところにこの熟語が使われている。 だが物語にのめり込むあまり展開を阻害したくなく、 想像を巡らせながら全部、飛ばして読む、 という荒業をやってのけたのは、N.river、小学6年生の時であった。 主人公、大貫警部はたいがい、だらしない男である。 いつもしまらず「欠伸」を連発。 頼りなさに部下はやきもき振り回されつつも、 気づけばいつの間にか事件を解決してしまう なんとも愛嬌たっぷりなキャラクターとして描かれている。 その緊迫感とユルさが、無駄に深刻ぶらず心地よい。 ヌケているようでヌケていない コロンボのような(意識されて書いておられるのやも) 巷の冴えないサラリーマンを応援しているような、 格好悪い大貫警部であるのだが、 読み終えた時には頼もしくも痛快な人物として感じられるのだから、 赤川氏、あっぱれなのである。 シリーズは「起承転結殺人事件」「冠婚葬祭殺人事件」と、 これまたシャレの効いた四字熟語で続いている。 まあ、ホント罪なく楽しいオハナシなのだ。 楽しいが、 そんな楽しさ醸し出す大貫警部、最大の特徴、 モチーフである「欠伸」を飛ばして一冊、読み切った幼き頃のN.riverは、 そこで初めて「自ら調べる」という行為を覚えたのだった。 さてはて辞書を引いたらば、 「欠伸」=「あくび」 分かった瞬間の、 すべてアミ伏せだった箇所が晴れ行くさまは、なんと爽快なことか。 ということで、それからは積極的に辞書を引く子となったのだった。 ありがとう、大貫警部。 ありがとう、赤川氏。 そんな拙いミステリーも含まれた、これもまた思い出の一冊なのだった。 ★赤川次郎氏の真骨頂がつめこまれたような ウィットに飛んだ エンターテイメント作品 と思われます 人気があるのかどうか 定かではありませんが 本作は 殺人事件が起きたとは思えぬほど どこかほっこりさせてくれる物語です |